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古都トレド(世界遺産登録:1986年)

カスティリヤ=ラ・マンチャ地方にあるトレドは、周囲三方が川に囲まれた城塞都市です。

中世に最も栄え、その面影を今尚色濃く残す旧市街地は、その全てが世界遺産に登録されました。

トレド繁栄のきっかけとなったのは、首座大司教座が置かれたことです。

歴史を遡ると、711年に、トレド周辺地域はウマイヤ朝に征服され、イスラム都市になりました。

その後、1085年にアルフォンソ6世が奪還、同年に首座大司教座が置かれ、トレドはイベリア半島のカトリック教会の中心地として発展することになりました。

この時代、大司教や国王が学者たちを庇護し、学問が栄えました。

特に優れた業績を残したのは、翻訳業です。

トレドではアラビア語の翻訳事業が盛んになり、古代ギリシャやローマの哲学・神学に関連する文献がアラビア語からラテン語に次々に翻訳されました。

これらの業績は、後のヨーロッパ文化の形成に大きな影響を与えたといわれています。

大都市になったトレドには、1577年には著名な画家、エル・グレコが移住してきました。

彼は亡くなる1614年までトレドに留まり、多くの名画を残しています。

トレド繁栄の歴史は、16世紀半ばまで続きますが、1561年にスペインの首都がマドリードに定められると急速に衰退します。

しかし結果として、中世の街並みがそのまま残ることになり、現在では観光客が多く訪れるスポットになっています。

古都トレド -2-

中世の景観が守られてきたトレドは、散策するだけでも中世気分を味わえるところです。

その中でも「2大建築物」と呼べるのは、カテドラルとアルカサル(王宮)です。

カテドラルは、1226年にフェルナンド3世の命により着工し、1493年に主要部分が完成しました。

これは、世界最大のゴシック建築の一つになり、装飾もまた見事です。

聖堂内には22もの礼拝堂があり、750枚もあるステンドグラスが内装の美しさを演出しています。

エル・グレコの絵画も飾られており、絵画ファンにとっても魅力あるところです。

アルカサルは、11世紀にカスティリャ王国の要塞として築かれたのが始まりです。

13世紀から16世紀にかけて大規模な改修工事が行われ、現在の姿になりました。

数世紀にかけての工事の中で様々な様式が取り入れられ、それらが入り混じったユニークな建築物になっています。

トレドにはこれらのシンボル的建築物以外に、ユダヤ教のシナゴーグやイスラム教のモスクが幾つかあり、多宗教の文化が入り混じった光景が見られます。

伝統工芸の「ダマスキナード」は、観光客にも人気の装飾芸術です。

これは、絵柄に金・銀などで細かい線を埋め込む象嵌細工で、鎧や剣などの武器の装飾芸術として16世紀に大きく発展しました。

現在では、アクセサリーなどの小さくて安価なものが多く販売されており、これらが観光客の人気を呼んでいます。

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