コルドバ歴史地区(世界遺産登録:1984年、拡大:1994年)
アンダルシア地方の都市コルドバは、キリスト教・イスラム教・ユダヤ教の歴史と文化が混ざり合った不思議なところです。
その起源を辿ってみると、7世紀頃迄はローマ人によって支配され、カトリック文化が根付いていました。
しかし756年、イスラム教徒により後ウマイヤ朝が成立。
その後、数世紀にわたり、イスラム教徒の支配下に置かれます。
この時、新しい王朝を建国したアブド=アッラフマーン1世が新しく獲得した領土を「アンダルス」と呼び、これがアンダルシア地方の名前の起源になりました。
後ウマイヤ朝は、10世紀には人口50万人を有する大都市になり、アンダルシアの地でイスラム文化が開花します。
多くのイスラム系学者たちがバグダットやダマスカスから東方文化を持ち帰り、根付かせました。
コルドバはその中心的役割を担い、「西方イスラム世界の中心」と呼ばれ、大繁栄の時代を迎えることになったのです。
しかし、11世紀に後ウマイヤ朝は権力抗争などの政治的混乱で勢いを失います。
また、レコンキスタによってキリスト教勢力に押され、1031年、ついにウマイヤ朝は崩壊しました。
アンダルスは20余りの小国家に分裂し、再びキリスト教文化が花開く土地になります。
このような支配の歴史の中で、建造物や文化は東西のものが融合していき、コルドバには他の都市にはない独特の街並みが形成されるようになったのです。
コルドバ歴史地区 -2-
キリスト教とイスラム教の両支配を経たコルドバを最も象徴する建物は、聖マリア大聖堂です。
この大聖堂は「メスキータ」と呼ばれていますが、メスキータとはスペイン語で「モスク」という意味で、元々はイスラム教寺院全般を指す言葉でした。
現在では主に、コルドバの聖マリア大聖堂を指します。
この大聖堂は、785年にイスラム教寺院として建築されました。
しかし、レコンキスタによってイスラム教が撤退したため、聖堂はカトリック教会に転用されることになりました。
16世紀にはモスク中央部にカトリックの教会堂が設置され、聖マリア大聖堂は、1つの建物にキリスト教・イスラム教の両文化が共存する世界でも珍しい建築物になりました。
この大聖堂は、1984年に単独で「コルドバのモスク」として世界遺産に登録されました。
その後、1994年に聖堂地域の世界遺産区域が拡張され、現在の「コルドバ歴史地区」になったのです。
現在、世界遺産に指定されている地域には、バラに囲まれた美しいイスラム式庭園を有するアルカサル(王宮)や古代ローマの時期に建設されたローマ橋、聖堂北のユダヤ人街などが含まれます。
コルドバは、多文化が融合した歴史をありのまま残す街並みが世界的に高く評価されているのです。
イスラム教支配の名残がある歴史的建造物はスペインのいたるところにありますが、コルドバ歴史地区の光景は、その代表格といえるでしょう。
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